衒学記鳥の日樹蝶

メイン記事が数学にシフトしてきたブログ。

積分対数シリーズ#2 log(1+tan(x)) 加法定理で我に返る

今回は対数の中にtan(x)を包んだものを見ていきましょう。

本題は、

\int_0^\frac{\pi}{2}\log(1+\tan(x))\,dx

なのですがこれがなかなかヤバい積分でしたので、前編後編に分けて今回は前フリです。

まずは肩慣らし。

前回の結果を利用して、\int_0^\frac{\pi}{2}\log(\tan(x))\,dxを見てみましょう。

実は拍子抜けするほど簡単で、tanはsin/cosですから、

\int_0^\frac{\pi}{2}\log(\tan(x))\,dx\\ = \int_0^\frac{\pi}{2}\log(\frac{\sin(x)}{\cos(x)})\,dx\\ = \int_0^\frac{\pi}{2}\log(\sin(x))\,dx-\int_0^\frac{\pi}{2}\log(\cos(x))\,dx \\ = 0

はい、積分区間0からπ/2において、log(sin(x))とlog(cos(x))は同じ値になるのでしたね。

pedantic-ganger.hatenablog.com

では準備運動。

本題の前哨戦として、積分区間が0からπ/4のヤツ、

 I = \int_0^\frac{\pi}{4} \log(1+\tan(x))\,dx

に挑みましょう。

Step1:King Rule

まずはお馴染み「King Rule」です。

これひとつで問題の取っつきやすさがガラッと変わることもあるので、指針に迷った時にはとりあえず考えてみるのもいいかもしれませんね。

変数x = π/4 + 0 - t と置換すると、

積分区間は、x:0 → π/4 ; t:π/4 → 0

dx = - dt となりますから、与式Iは

 I = \int_\frac{\pi}{4}^0 \log(1+\tan(\frac{\pi}{4}-t))\,(-dt) \\=\int_0^\frac{\pi}{4}  \log(1+\tan(\frac{\pi}{4}-t))\,dt

Step2:tanの加法定理

tanにとってπ/4はとても扱いやすい助かる値ですね。

ですのでこれを利用しようと、「加法定理」を使いましょう。

tanの加法定理

 

 \tan(\alpha+\beta)= \frac{\tan(\alpha)+\tan(\beta)}{1-\tan(\alpha)\tan(\beta)}

でしたので、

I = \int_0^\frac{\pi}{4} \log\left( 1+ \frac{ \tan(\frac{\pi}{4}) - \tan(x) }{ 1+ \tan(\frac{\pi}{4})\tan(x) }\right)\,dx \\ =\int_0^\frac{\pi}{4} \log\left( 1+\frac{1- \tan(x) }{ 1+ \tan(x) }\right)\,dx \\ =\int_0^\frac{\pi}{4} \log\left( \frac{2}{ 1+ \tan(x) }\right)\,dx \\ = \int_0^\frac{\pi}{4} \big( \log(2) - \log(1+\tan(x)) \big) \,dx \\ = \frac{\pi}{4}\log(2) -\int_0^\frac{\pi}{4} \log(1+\tan(x)) \,dx \\ = \frac{\pi}{4}\log(2) - I

FINAL:同形出現

もう分かりますね。

 2I = \frac{\pi}{4}\log(2) ですから、

 I = \int_0^\frac{\pi}{4} \log(1+\tan(x))\,dx = \frac{\pi}{8}\log(2) でした。

 まとめ

結果出現した値はやっぱりπとlog(2)が絡んでくるものでした。

数学には基本定数となるような無理数がいろいろとあるのですが、このlog(2)、「2の自然対数」もその一つですね。

これの出てくる積分でぜひ紹介したい興味深い問題もあるのですが、それはまたの機会に取っておきましょう。

 

次回は、本題\int_0^\frac{\pi}{2}\log(1+\tan(x))\,dxへ挑みます。

A4計算用紙二枚は埋める計算量となる上に、新しい数学定数を導入して表されることになります。

お楽しみに。

 

参考:

天地有情 [LaTeX] cancel --- 数式にスラシュ,バックスラシュなどを引く