数学 Vardi Integral(前編)(No.007)
書きかけの記事が吹っ飛ぶのって、悲しいね。
はい、いつもの積分コレクションです。
ただ先にいっとくけど、面白い計算だけどかなりヘビーですから今回。
ヴァルディ積分(と呼べばいいのでしょうか…)という、対数の対数の入れ子にタンジェントが入ってるというトチ狂った関数の積分です。
参考はこちらの動画:
式に名前がついているものって数学の自由度から言えばごく限られているとは思うので、多分この問題も式の名前というよりヴァルディさんの研究か発表だかで触れられたもの、くらいの意味での仮称のように思うのですが詳しいことは知らん。
個人的に興味深い式を見かけたので私の勉強がてらに記事に描いてみようと思ったのでした。
本題。
私の力量は数Ⅲレベルの延長線上に多少毛の生えた程度のへなちょこですんで、式変形を(TEX書くのめんどくさがらない範囲で)丁寧目に追うつもりです。
そして元動画ご覧になればわかりますが長いです。
記事のパート分け必至です。
Vardi Integral について、
$$
\int_\frac{\pi}{4}^\frac{\pi}{2} \ln(\ln(\tan x))\,dx……(★)
$$
let, ;
\begin{eqnarray}
du&=&\frac{(\tan x)'}{\tan x}dx=\frac{1}{\tan x}\frac{1}{\cos^2 x}dx\\
&=&\frac{1}{\tan x}(\tan^2 x\,+1)dx\\
&=&\left(\tan x+\frac{1}{\tan x}\right)dx
\end{eqnarray}
なので、
よって、
\begin{eqnarray}
(★)&=&\int_0^\infty \ln(u)\,\cdot\frac{1}{e^u+e^{-u}}du\\
&=&\int_0^\infty \ln(u)\,\cdot\frac{e^{-u}}{1+e^{-2u}}du\\
&=&\int_0^\infty e^{-u}\ln(u)\,\cdot\frac{1}{1+e^{-2u}}du\\
\end{eqnarray}
ここで、収束条件とかカタイこと言わずに無限等比級数の公式を思い出すと、
$$
=\int_0^\infty e^{-u}\ln(u)\sum_{n=0}^{\infty}(-e^{-2u})^n du
$$
$$
=\int_0^\infty e^{-u}\ln(u)\sum_{n=0}^{\infty}(-1)^n e^{-2nu} du
$$
さらに、厳密性には目を瞑って積分と総和をとる順序を交換すると、
$$
=\sum_{n=0}^{\infty}(-1)^n\!\int_0^\infty e^{-u}\ln(u)e^{-2nu} du
$$
$$
=\sum_{n=0}^{\infty}(-1)^n\!\int_0^\infty \ln(u)e^{-(2n+1)u} du
$$
let, ;
\begin{eqnarray}
&=&\sum_{n=0}^{\infty}(-1)^n\!\int_0^\infty \ln\left(\frac{v}{2n+1}\right)e^{-v}\cdot\frac{1}{2n+1}dv\\
&=&\sum_{n=0}^{\infty}\frac{(-1)^n}{2n+1}\int_0^\infty \left(\ln(v)-\ln(2n+1)\right)e^{-v}dv\\
&=&\sum_{n=0}^{\infty}\frac{(-1)^n}{2n+1}\int_0^\infty \ln(v)e^{-v}dv\,-\sum_{n=0}^{\infty}\frac{(-1)^n}{2n+1}\int_0^\infty \ln(2n+1)e^{-v}dv\\
&=&\sum_{n=0}^{\infty}\frac{(-1)^n}{2n+1}\int_0^\infty \ln(v)e^{-v}dv\,-\sum_{n=0}^{\infty}\frac{(-1)^n}{2n+1}\ln(2n+1)\int_0^\infty e^{-v}dv\\
&=&\left(\sum_{n=0}^{\infty}\frac{(-1)^n}{2n+1}\right)\left(\int_0^\infty \ln(v)e^{-v}dv\right)+\sum_{n=1}^{\infty}\frac{(-1)^{n+1}}{2n+1}\ln(2n+1)\\
\end{eqnarray}
ここからこの式の三つの部分のそれぞれの正体を紐解く段になります。
(動画内では(A)(B),(C)と割り振っているところですね)
そのそれぞれがまた興味深く、ボリューミーなところですので記事の方も分けさせていただきます。
予告っぽくキーワードをネタバレしておくと、
(A)がアークタンジェント、
(B)がディガンマ関数、
(C)がクンマー級数を用いるようです。(Kummer seriesって何だ!?全く知らないぞ…)
なのでここまでで前編と銘打たせていただきまして、後編で三つの部分の計算を小問風にさらった後計算のまとめに入りたいと思います。