衒学記鳥の日樹蝶

メイン記事が数学にシフトしてきたブログ。

新年明けましたの挨拶とテーマと数学。(No.012)

新年明けましたおめでとうございます。

本年はこのブログも有効に活用して趣味と実益を兼ねた活動をしたいですね。

ここ一年の個人的メインの関心が数学とデレステに偏っていますので、ここのテーマもそのうち染まっていくと思われます。

さて、数学です。

今回のお題は三角関数積分

まずは準備運動から始めましょう。

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初級編

無論この積分は、数三の微積分を学んだ人なら問題というよりも暗記事項ですよね。

{\displaystyle}

$$\int_0^\frac{pi}{2}sin(x),dx=[-\cos(x)]_0^\frac{pi}{2}=1$$ 

三角関数微分積分はsinとcosをぐるぐる入れ替えるのでしたね。

積分の、面白くまた不思議なところは、被積分関数が一見なんてことないように思えるものでも、少し変わっただけで急に難しくなるものがあるというところです。

そんな積分パズルの魅力をお見せできたらいいなーと思っています。

 

では難易度が上がります。

中身をくるっと逆数にしてみましょう。

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中級編

こうするだけで難度がグッと上がります。

微分してsin(x)の逆数(csc(x)と呼ぶこともありますね)になるような関数って、容易には思いつかないですよね…

置換積分です。三角関数を別の式へと置き換えてあげましょう。

とはいえ安直にt=\sin(x)と置いたって微小量dt=\cos(x)\,dxで再びcos(x)が必要になってきてしまってせっかくの置き換えが活かせていません。

ですので一工夫。

必要になるくらいだったら最初から用意しておけばいいじゃないか、と。

$$\int_0^\frac{\pi}{2}\frac{1}{\sin(x)}\,dx$$

$$=\int_0^\frac{\pi}{2}\frac{\sin(x)}{\sin^2(x)}\,dx$$

$$=\int_0^\frac{\pi}{2}\frac{\sin(x)}{1-\cos^2(x)}\,dx$$

こうして置換t=\cos(x)とすると、dt=-\sin(x)\,dxですから分子へ用意したsin(x)が使えますね。

$$\int_0^\frac{\pi}{2}\frac{\sin(x)}{1-\cos^2(x)}\,dx=\int_1^0\frac{1}{1-t^2}\,(-dt)$$

$$=\int_0^1\frac{1}{1-t^2}\,dt$$

あとは部分分数分解ですね。

$$=\int_0^1\frac{1}{2}\left(\frac{1}{1-t}+\frac{1}{1+t}\right)\,dt$$

$$=\frac{1}{2}\left[ -\log{|1-t|}+\log{|1+t|}\right]_0^1$$

$$=\frac{1}{2}\left[\log{\Big|\frac{1+t}{1-t}\Big| }\right]_0^1$$

$$\to\infty $$

つまりこの積分は有限の値を取らず発散してしまうのでした。*1

いよいよ本題です。

前置きがえらく長くなってしまいましたが、ここからが今回のメインディッシュの問題です。

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上級編

分母をたった2ズラしただけで約分できそうな、三角関数の分数関数の問題です。

まずは 分数関数お馴染みの整数部分の放り出しです。*2

$$\int_0^\frac{\pi}{2}\frac{\sin(x)}{2+\sin(x)}\,dx$$

$$=\int_0^\frac{\pi}{2}\frac{2+\sin(x)-2}{2+\sin(x)}\,dx$$

$$=\int_0^\frac{\pi}{2}\left( 1-\frac{2}{2+\sin(x)}\right)\,dx$$

$$=\frac{\pi}{2} - 2\int_0^\frac{\pi}{2}\frac{1}{2+\sin(x)}\,dx$$

さぁ、先ほどと似たような、けれど段違いに厄介な積分が出てきました。

これを乗り越えられるかが鍵です。

ここで使うのは受験生の万能の、されどそのめんどくささから思考を放棄した計算マシーンになると揶揄される「ワイエルシュトラス置換 u=\tan(\frac{x}{2})」です。

$$du=\frac{1}{2}\sec^2\left(\frac{x}{2}\right)\,dx=\frac{1}{2}(1+\tan^2\left(\frac{x}{2}\right))\,dx=\frac{1+u^2}{2}\,dx$$

よって

$$dx=\frac{2}{1+u^2}\,du$$

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$$\int_0^\frac{\pi}{2}\frac{1}{2+\sin(x)}\,dx$$

$$=\int_0^1\frac{1}{2+\frac{2u}{1+u^2}}\frac{2}{1+u^2}\,du$$

$$=\int_0^1 \frac{1}{u^2+u+1}\,du$$

さて分母が二次方程式になればさらに既知のパターンへ持ち込めます。*3

$$u^2+u+1=(u+\frac{1}{2})^2+\frac{3}{4}$$

と、平方完成すれば被積分関数\frac{1}{x^2+a^2}という形に見なせますね。

要は、(u+\frac{1}{2})^2=\frac{3}{4}\tan^2(\theta) と置換できれば上手いこといくので、u=-\frac{1}{2}+\frac{\sqrt 3}{2}\tan(\theta)と置くことにする。

 $$du=\frac{\sqrt 3}{2}\sec^2(\theta)$$

となるので、

 $$\int_0^1 \frac{1}{u^2+u+1}\,du=\int_\frac{\pi}{6}^\frac{\pi}{3} \frac{4}{3}\frac{1}{\tan^2(\theta)+1}\frac{\sqrt 3}{2}\sec^2(\theta)\,d\theta$$

$$=\int_\frac{\pi}{6}^\frac{\pi}{3} \frac{2}{\sqrt 3}\,d\theta$$

$$=\frac{2}{\sqrt 3} \left( \frac{\pi}{3}-\frac{\pi}{6} \right)$$

$$=\frac{\pi}{3\sqrt 3}$$

$$=\frac{\sqrt 3}{9}\pi$$

あとは元の式に当てはめてようやっと出来上がりです。

 $$\int_0^\frac{\pi}{2}\frac{\sin(x)}{2+\sin(x)}\,dx$$

$$=\frac{\pi}{2} - 2\int_0^\frac{\pi}{2}\frac{1}{2+\sin(x)}\,dx$$

$$=\frac{\pi}{2} - 2\cdot\frac{\sqrt 3}{9}\pi$$

$$=\frac{9-4\sqrt 3}{18}\pi$$ 

 

以上!

余り丁寧に式変形は追えませんでしたが、被積分関数がちょっと変わっただけで複雑になる、積分の面白さが感じてもらえたとしたら幸いです。

 

 

*1:反比例の式と同じで、sin(x)の逆数のグラフを描けば0近傍で発散し面積が無限になってしまうのもイメージできちゃうのですけれど。

*2:ここで分子側のsin(x)をそのまま置いておくと、この後の置換で非常に苦しくなります。

*3:私はここで計算間違いしてベータ関数引っ張り出さなきゃならんくなったり、先の括りだしをせず置換して分母が4次方程式になってしまって相反方程式出してきたりしてどん詰まりました。